借地権とはなにか
借地権とは、借地借家法に基づく定義で、建物所有を目的とする地上権及び土地の賃借権をいいます。
簡単に言えば、他人の土地を借りて、その土地上に建物を建てられる権利です。ここまでの説明は、ほとんどのサイトでも解説されています。
では、そもそも借地借家法って?建物所有目的ってなに?地上権とは?土地の賃借権とは?これらをすべて解説します。その解説をふまえて、借地権とは、他人の土地を借りて、その土地上に建物を建てられる権利ということがおわかりになるでしょう。
借地借家法第2条第1項(定義)
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
借地借家法とは?
借地借家法とは、平成4年8月1日に施行された法律で、建物所有を目的とする土地の貸し借りや、建物の貸し借りについて定めた法律です。
この法律の趣旨は、土地や建物の賃貸借契約における借主(借りている方、借地人・借家人)を保護するものです。
借地借家法が施行される以前は、借地法・借家法・建物保護法という3つの法律によって、借主の保護を定めていました。借地借家法はこの3つの法律が統合され、新しく施行された法律です。
借地借家法第1条(趣旨)
この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めたものである。
そもそも、モノの貸し借りは民法(平成32年4月1日改正)に定めがあります。
民法601条(賃貸借)
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
日常生活における物の貸し借りは民法の規定に基づきます。
例えば、レンタルショップでモノを借りたり、不動産に関する賃貸借でも貸し駐車場のような建物が関与しない賃貸借においては、民法の規定に基づきます。
建物の貸し借り、建物所有を目的とする土地の貸し借りの場合、民法の規定より優先して、借地借家法の適用を受けます。この様な法律を特別法といいます。なお、借地借家法に定めがない事項については、民法の規定を準用します。
民法と借地借家法の違い
モノの借り貸しについての法律2つ、民法と借地借家法の違いを見てみましょう。
民法(一般法)※平成32年4月1日に改正されました。
民法の規定は、前述したとおり、日常生活においてのモノの貸し借りや不動産に関連することとしては、貸し駐車場等、建物の所有を目的としない土地の賃貸です。
契約期間 | 50年以下(改正以前は20年以下) |
---|---|
契約方法 | 規定なし |
契約更新 期間満了 | 法定・合意更新可能 |
返 還 | 規定なし |
借地借家法(特別法)
建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約(借地契約)または、建物の賃貸借契約(借家契約)などです。
日常生活で最も関係することといえば、アパートやマンションを借りる借家契約ではないでしょうか。借地と借家について特別に規定した法律です。
借地借家法の中で、土地の借り貸しについて定められており、借地借家法の適用を受ける借地契約を根拠とする権利を借地権といいます。
つまり、民法と借地借家法は、貸し借りをするモノ(対象物)の違いにより、適用となる法律が変わることがわかります。
建物所有を目的とする土地の貸し借り、建物の貸し借りは借地借家法の適用を受け、その他は民法の適用を受けるということです。土地の借り貸しでも、建物所有を目的としない場合、借地借家法の適用を受けず、民法の適用を受けます。
借地借家法の沿革
借地借家法は、平成4年8月1日に施行された法律で、借地借家法が施行される以前は、借地法・借家法・建物保護法の3つの法律によって、借地人の保護を行っておりました。
時代を遡ると、明治42年(1909年)に建物保護法が施行されるまで、借地人は保護されておらず、土地の所有者が変わった場合、新地主に土地を明け渡せと言われたら、建物を解体し、土地を明け渡さなければいけませんでした。
いわゆる第三者対抗要件がなかったということです。
このように、建物保護法が施行される以前まで、借地人は急に住まいがなくなってしまう恐れがあるという不安定な状況にありました。
明治42年 | 建物保護法施行 建物の登記がされていれば第三者に対抗できる法律 |
---|---|
大正10年 | 借地法施行 借地権の存続期間や効力、更新などに関して定めた法律 |
昭和16年 | 借地人を立退き(更新拒絶など)から守るために地主側には「正当事由」がないと立ち退きを認めなくなりました。 |
昭和41年 | 借地非訟手続きの導入。賃借権は売買、増改築など一定の行為を行う場合には地主の承諾が必要となりますが、地主がそれらを認めなかった場合、紛争を迅速に解決へと導くために地主に代わる許可を裁判所が行うことが可能に。 |
平成4年 | 借地借家法施行 土地の有効利用を促進するために、更新及び建物の存続期間による契約延長が無い定期借地権などが定められました。 |
地上権とは
地上権とは、民法に規定する権利で、他人の土地を、目的をもって利用する権利です。
民法265条(地上権の内容)
地上権者は、他人と土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
民法に規定する工作物とは、建物、道路、橋梁、トンネル、鉄塔、地下鉄などすべての地上及び地下の施設をいいます。地上権設定の有無は、土地に登記されます。
地上権は土地を直接的に支配できる強い権利を有するものです。地上権者は、地主の承諾なくして地上権の譲渡や転貸することができます。
地上権と賃借権の違い
おなじ、他人の土地を利用する(できる)権利として、地上権と賃借権があります。この違いについて解説します。
設定行為 | 地上権設定契約 |
---|---|
登 記 | 土地に地上権の登記がされる(地主の協力義務有) |
特 徴 | 地上権の譲渡・転貸、建替え等については地主の承諾が原則不要 |
設定行為 | 土地賃貸借契約 |
---|---|
登 記 | 土地に賃借権の登記は可能だが、していないことが多い(地主の協力義務無) |
特 徴 | 賃借権の譲渡・転貸、建替え等については地主の承諾が原則必要) |
地上権と賃借権の根本的な違いは、地上権は物権で、賃借権は債権であることです。
物権とは、直接的にモノを支配できる権利で、債権とは一方がもう一方に対して特定の行為をなすことが請求できる権利です。
もう少しわかりやすく説明すると、地上権の場合、借地権者は地主の意向を介せず、直接借地権者の意思をもって建物を所有する目的で土地を利用する権利で、賃借権の場合、借地権者は債務履行(地代の支払いや地主の承諾取得等)を条件に、地主から建物を所有する目的で土地を借りて利用する権利です。
借地権とは【まとめ】
借地権とは、借地借家法に定義される権利で、建物所有を目的とした地上権及び土地の賃借権です。
建物所有を目的としていないと借地借家法の適用を受けず、借地権とは言いません。
また、土地の利用できる権利が地上権と賃借権の2つあることもお判りいただけたと思います。
実際は、地上権の借地権は稀で、ほとんどが賃借権の借地権です。これは、土地を貸す地主が地上権の設定することは珍しく、その多くは賃借権にて土地を貸しているものによります。
借地権の種類と特徴
借地権はいくつかの種類があります。
これは平成4年に借地借家法が施行され、借地権の種類が増えたといって過言ではありません。
いままで、借地人の保護のために建物保護法や借地法が施行されましたが、借地人を保護するあまり、地主にとっては一度借地権を設定すると、ほぼ土地を返還されることがありませんでした。このため、土地を新たに貸そうとする地主が減り、不動産流通・土地の有効活用が滞ってしまいました。
そこで、契約期間満了によって必ず地主に土地が返還される定期借地権等を定義した借地借家法が施行され、借地権の種類が増えることとなりました。
借地借家法施行以前より借地権が存在しているのは、借地借家法の経過措置により、旧借地法の適用をうけることとなります。
借地権の種類は、旧法借地権と新法借地権がある
■旧法賃借権(旧借地法)
借地借家法施行以前より存在する借地権で、借地法に基づいて設定された借地権です。
借地借家法施行により、借地法自体は廃止されましたが、借地借家法の経過措置により、借地法に基づいた法的定めの適用を受けます。借地法がされたため、旧借地法と呼ばれることが多く、旧借地法に基づく借地権を旧法借地権といいます。
■新法賃借権(借地借家法)
平成4年8月に施行され、新しく普通借地権、一般定期借地権、建物譲渡特約付き借地権、事業用定期借地権というものができました。
旧法と大きく違うのは、この定期借地権という更新の定めのない借地権ができ、借地期間満了と同時に借地人は地主に土地を明渡さなければなりません。
背景には土地の有効利用を促進するため、貸したら返ってこないと言われていた旧法賃借権の改善が目的とされています。
新借地借家法は下記のように分類化されます。
■普通賃借権
旧法賃借権とほとんど変わりはありませんが、堅固建物と非堅固建物の所有目的区別が無くなり、当初の契約期間や更新の期間が旧借地法と違います。 (図1:旧法・新法の違い参照)
■一般定期借地権
契約期間満了をもって、地主に借地権上の建物を解体し、土地を明け渡さなければいけない借地権です。
更新及び建物の存続期間による契約延長が無い契約となり、契約期間は50年以上と定められています。
特約などで、地主が建物の買取りをしない旨を定めた場合でも有効となり、契約書は公正証書による等、書面によって行わなければなりません。
■事業用定期借地権
専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、契約期間を30年以上50年未満として借地権の契約をします。
更新や期間の延長などは無く建物を相当の対価で借地権設定者に買取る請求をしない旨を定めた特約も有効となります。契約書は公正証書による等の書面によって行わなければなりません。
また、事業用定期借地権の場合は10年以上30年未満とする契約期間で借地権を契約することもでき、その場合も借地権者は更新や期間の延長、建物買取り等の請求はできません。10年以上30年未満とする事業用定期借地権の契約は公正証書によってしなければなりません。
■建物譲渡特約付き借地権
借地権設定後、30年以上を経過した日以降に借地権設定者(地主)に対し相当の対価で建物を譲渡する旨の特約を契約書に定めることができます。
上記特約により借地権が消滅し、それ以降に借地権者または建物の賃借人が使用を継続する旨を借地権設定者(地主)に請求した場合は、当事者間でその建物につき定期建物賃貸借契約を締結します。
また、借地権者または建物の賃借人が使用を継続する旨を借地権設定者に請求し、借地権設定者が賃貸を認めなかった場合には、その建物につき期間の定めのない賃貸借がされたものとみなされます。(借地契約に残存期間がある場合はその残存期間の賃貸借)
その場合の賃借は、当事者の請求により裁判所が定めることになります。
図1旧法・新法の違い参照
旧法借地権 | |||||
---|---|---|---|---|---|
堅固建物 | 非堅固建物 | ||||
最初の 契約期間 |
契約期間 | 30年以上 | 20年以上 | ||
契約期間の定めがない場合 | 60年 | 30年 | |||
更新後の 契約期間 |
契約期間 | 30年以上 | 20年以上 | ||
契約期間の定めがない場合 | 30年 | 20年 |
新法借地権 | |||||
---|---|---|---|---|---|
堅固建物 | 非堅固建物 | ||||
当初の 存続期間 |
存続期間 | 30年以上 | |||
契約期間の定めがない場合 | 30年 | ||||
更新後の 存続期間 |
存続期間 | 1回目20年以上 以降の更新10年以上 |
|||
契約期間の定めがない場合 | 1回目20年 以降の更新10年 |
ご自身の契約が旧法借地権なのか、新法借地権なのか、よくわからない・・・といった場合は、契約期間で確認できることがあります。
地主との借地契約期間が20年間であれば旧法借地権、30年間であれば新法借地権と推測することができます。
しかし、これだけでは確定することはできません。新法借地権でも契約期間を間違えている可能性もありますし、旧法借地権でも30年間の契約期間もあり得ます。あくまで参考程度の推測ができるといったところでしょう。
借地権の地代・更新料について
借地権の契約期間中、借地権者は地主に対して地代を支払う義務があります。
地代とはあまり聞きなれない言葉ですが、土地を借りている賃料・土地賃借料のことをいいます。
また、旧法借地権及び新法借地権の普通借地権の場合、契約期間満了後、契約更新をすることができます。契約更新の際、契約書の定めや慣習によって地主に対して更新料を支払うことがあります。地代の相場や更新料について解説します。
地代の相場
地代は法的に決められている計算式があるわけではありません。しかし、借地権者・地主は互いに地代の相場は気になるところです。そこで適正な地代を算出する場合の参考方式をご紹介します。
- 利回り法・・・土地の価格の変動に応じて、利回りを元に地代を変動させる。
- スライド法・・・物価の変動に応じて、地代を変動させる。
- 公租公課倍率法・・・租税公課の変動に応じて、地代を変動させる。※速算方式
- 平均的活用利子率法・・・土地の価格の変動に応じて、利子率を元に地代を変動させる。※速算方式
地代の改定
地代を改定する場合、借地権者と地主の合意が必要です。
地主より一方的に請求された金額を払わなければいけないものではなく、お互い話し合いによって合意した金額を支払う必要があります。
また、逆説的に、借地権者が現在の地代が高額と思うからといって、勝手に安い金額を払ってもいけません。
地代金額は、借地権者と地主の借地契約において、根幹の部分ですので、お互いの合意が必要なのです。
地代改定にお互いの合意が得られない場合、調停・訴訟の流れによって、新たな地代を決める方法もあります。
また、地主が地代改定したいからと従前の地代額を受け取らない場合、借地権者は地代の未払いになってしまいます。
地代の未払いは借地契約解除事項となってしまいますので、地主が地代を受け取らない場合、借地権者は地代を供託所に供託することをお勧めします。
地代を供託することで、地代の未払いとなることを防止することができます。なお、供託する地代額は、従前の地代額です。
借地権の契約更新
定期借地権ではない借地権(旧法借地権・新法普通借地権)の場合、20年毎・30年毎などに借地権の契約更新時期を迎えます。
旧法借地権及び新法借地権の普通借地権は、建物の存在している限り、契約更新が前提の権利です。
契約更新時に新たに地主と借地権者間で土地賃貸借契約書等を締結したり、更新料等の交渉がある可能性がありますので、契約期間満了日より1年から6か月間前を目安に借地契約更新について、地主と借地権者間でお話合いを進めた方がいいと思われます。
地主と借地権者間の交渉で契約更新の合意ができない場合、借地権はどうなるのでしょうか。その答えは…借地契約は『法定更新』されます。法定更新とは、借地契約が借地借家法に基づいて、自動的に契約期間が更新されることをいいます。 突然やってくる地主の立ち退き要求
借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでではない。
借地借家法第5条に記載があるととおり、『法定更新』が可能なのは、“建物が存在する限り”です。契約更新時に借地上の建物がない場合、法定更新を主張することはできません。
更新料の目安
借地契約を更新する際、地主と借地権者間の土地賃貸借契約等の契約の定めや、慣習により、借地権者が地主に更新料を支払います。20年に1回、30年に1回の更新料。その目安を解説します。
更新料・・・更地価格の3~5%前後または借地権価格の5~10%前後と言われております。
料率が異なることや、言われておりますという末尾からお判りのように、更新料の金額について、法的に定めがあるものではありません。また、借地権者の更新料の支払い義務も法的に定められてはおりません。
しかし、法的に定めがないからといって地主からの更新料請求について、まったく対応等をしないと地主との関係性が悪化してしまう恐れがあります。
地主との関係性は、将来の承諾取得等についても悪影響を及ぼす可能性があります。この点注意しましょう。 借地権の更新料の計算方法及び更新料は支払わなければならない?
借地権の売買について
借地権とは、前述したとおり建物を所有する目的で土地利用する権利です。
この権利は不動産上の財産であり、売買することができ、また、相続時の相続財産として相続対象となります。借地権の売買・相続について注意点も踏まえて解説します。
借地権のメリット・デメリット
借地権が売買できる・されるということは、法的に認められている権利であるというほか、借地権という不動産が不動産市場において需要があるということです。
それでは、借地権のメリット・デメリットとは何でしょうか。
借地権のメリット
- メリット1
借地権は第三者の土地を借りて建物を建てているわけですから、土地に係わる税金(固定資産税・都市計画税、土地の不動産取得税など)が掛かりません。 - メリット2
所有権の不動産に比べ、借地権のマンションや戸建ては安価で購入が可能です。 - メリット3
借地借家法にて保護されている権利ですので、建物が存在し、地代の支払をすることで、半永久的に土地を利用することができます。
借地権のデメリット
借地権(賃借権の場合)は地主さんに承諾を取らなければできない事が多い。
金融機関から借入を行う場合、抵当権設定承諾書に地主の実印が必要になる。地主から実印の押印を断られる可能性がありローンが組めなくなる可能性がある。買主側の殆どは住宅ローンなどで購入検討する為、抵当権設定承諾書に押印が貰えないと売却できない可能性がある。
地代や更新料・承諾料など支払わなければならない。
借地権のメリット・デメリットを簡単に列挙すると以上の3点ずつです。借地権のメリット・デメリットをよく把握したうえで、借地権を買いたいと思う人がいるため、不動産として借地権を売買することが可能です。
借地権の売買と地主の承諾
借地権という権利は借地権者の財産です。借地権という財産を売買することは、原則、借地権者の自由です。
自分の財産をどう処分するかは財産所有者が決めることだからです。
しかし、借地権の場合、地主の土地を利用する権利であることから、地主の承諾が必要です。地主としても、自分の土地を利用する人・土地賃借人となる人がどんな方になるのか、また、借地権を第三者に売却されると困る正当な理由があるなど、地主の意見・意向をまったく無視されると地主も困ってしまうからです。※地上権の場合は不要。
地主の承諾が必要な事項
借地権は、地主と借地権者との契約(約束事)に基づいて設定されている権利であり、借地権者が売買等をしたい場合、前述のとおり地主の承諾が必要となります。借地権の売買のほか、どのようなときに地主の承諾が必要なのでしょうか。
地主の承諾が必要な事項
- ■借地権の売買・名義変更
借地権を売買・売却するとき、名義変更(子供名義にするなど、贈与も含む)
借地権者(土地賃借人)が変更となるため、地主の承諾が必要。 - ■増改築・建替え
借地上の建物の増改築・建替えをするとき
借地上の建物を増改築・建替えを行う場合、借地契約期間延長に関連する事項のため、地主の承諾が必要 - ■条件変更
非堅固建物所有目的から堅固建物所有目的に条件を変更するとき
借地上の建物を、木造建物から鉄筋コンクリート建物(RC造)に建替えを行う場合、借地契約期間延長に関連する事項のため、地主の承諾が必要
上記のほか、借地上の建物の大規模改修等、地主の承諾が必要な場合があります。
地主の承諾が必要な事柄について、地主の承諾なくこれを行ってしまうと、借地契約の解除要件となってしまいます。
ですから、こまめに地主とコミュニケーションをとり、承諾が必要な事項・そうでない事項を調整していく必要があります。
借地権の承諾料の目安
地主に承諾が必要な事項に対して、承諾取得の対価として承諾料を支払うことが一般的です。承諾料について、法的に定めがありませんので、地主さんによって様々です。ですが、一般的な慣習として下記が基本となっています。
承諾項目 | 承諾料の目安 |
---|---|
名義変更料 (第三者への売却) |
借地権価格の10%程度とされています。 |
遺贈 | 遺贈は相続と違い、名義変更料がかかります。 借地権価格の10%程度とされています。 |
建て替え承諾料 | 更地価格の3%程度とされています。 注:建て替えには条件変更を伴わない事が前提です。もし、条件変更(非堅固建物から堅固建物に建て替える場合など)に該当する場合には別途条件変更承諾料を請求される可能性もあります。 |
増改築承諾料 | 建て替え承諾料と同じで更地価格の3%程度とされています。増改築承諾に関しては地主が認めない場合、裁判によって代諾許可を受けることも可能です。 |
大規模リフォームの承諾料 | 更地価格の3%程度とされています。 注:リフォームにも様々で大規模と言われるものは躯体の工事や屋根などが当てはまります。ですが、地主さんによっては承諾をしないで工事をしたとトラブルになる可能性もありますので、リフォームをする際にはどのような工事をするのかなど事前に打ち合わせをして承諾料がかかるのか確認したほうが良いと思います。 |
※この他に、ローン承諾といい、買主が住宅ローンなど組む際に金融機関から地主に対し抵当権設定承諾書を提出してくださいと言われることが殆どです。
この抵当権設定承諾書には地主の実印及び印鑑証明の提出が必要となり、この書類を地主からもらう際に金銭の授受が行われています。
ただし、ローン承諾への押印に関して地主は必ず押印しなければならないという法的な義務はありません。
なので、押印の際に印鑑代として金銭を渡して押印していただくのが慣例のようです。
地主から承諾をもらえない場合はどうしたらいい?
地主から承諾をもらえない場合は裁判所から代諾許可を得ることができます。この代諾許可は裁判を起こして裁判所から地主に代わる許可を貰う為、相当な期間がかかります。
この裁判の事を借地非訟裁判と言います。
裁判所から代諾許可を貰えるのは下記の4つです
- ■借地条件変更申立
- ■増改築許可申立
- ■土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立
- ■競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立
申立ての手順などは裁判所のホームページをご覧ください。 裁判所:借地非訟事件について 地主が借地権を第三者に売却することを認めなかった場合、一般エンドユーザーに借地権を売却することは困難になると考えた方がいいかもしれません。
トラブル(裁判)を抱えている物件を一般エンドユーザーが購入検討をするのか?という問題が出てきます。
借地権を第三者に譲渡することを裁判所に許可を得る申し立てを行う場合、買主が決まっていないと本申し立てをすることができません。
それは、本申し立ての主旨が、特定の買主に借地権を譲る(売却)することを裁判所に許可をもらうことだからです。
裁判所も許可を出す以上、その相手が誰でもいいというわけではありません。買主の資力信用も許可の判断材料になるのです。
たとえば、買主に資力(お金)がなく、新たな借地権者となっても地主に地代を払えないような方に裁判所も許可を出すわけにはいきません。
つまり、地主にとって新たな借地権者となることに不利にならないような相手に借地権を譲ることを許可するということです。
地主が国(財務省)、国有地を借地している場合
国(財務省)が新たに土地を貸すことはあまりありません。
国(財務省)が地主の場合の多くは、過去、個人の地主が相続税等の納税の代わりに土地を納める『物納』によって、地主が国(財務省)になったケースがほとんどです。
地主が国(財務省)の場合、借地権の売却の承諾をしてもらえるのでしょうか。
その答えは、国(財務省)は借地権譲渡承諾をしてもらえます。
しかし、実際は国(財務省)が譲渡承諾をすることは多くありません。
それはなぜでしょうか。それは、国(財務省)が地主の借地権は、借地権譲渡承諾を得て、借地権を売却するのではなく、国(財務省)の底地と一緒に借地権を売却する『底借(そこしゃく)同時売却』となることが多いからです。 底地が国有地の場合は売れるの?手続きや流れなどを解説します
底借同時売却とは?
底借(そこしゃく)同時売却とは、地主が所有する底地(土地)借地権者が所有する借地権を同時に売却することをいいます。
底借を略して、『同時売却』と言ったりもします。
同時売却のメリットは、借地権と底地を同時に売却することで、借地権単独で売却するときよりも高く売却できることです。
また、地主も同時に土地を売却することになりますので、承諾料等の費用も不要となります。
買主側も借地権と底地を同時で買い取ることができるため、完全な所有権として不動産を取得することになります。
このことから、借地権と底地の同時売却『底借同時売却』は、借地権を最も高く売却できる方法といっても過言ではありません。底借同時売却するには、借地権者と地主が同じタイミングで売却する必要があります。借地権者と地主の売却時期が合わないとできない手法とも言えます。 個人が地主の借地権・底地の同時売却 メリットやタイミングを解説
借地権の相続
借地権とは、地主の土地を利用できる権利で、不動産上の財産であり、相続財産対象であると前述しました。
借地権者が亡くなった場合、相続手続きが必要です。このときの注意点等を解説します。
相続手続きについて
相続が発生した場合、不動産や預金・有価証券等の財産は、法定相続人に相続されます。
法定相続人が複数人いる場合は、全員に法定相続分に応じて相続されることが原則です。
しかし、法定相続人全員の協議・合意のもと、相続対象物をだれが何を相続するのか決めることができます。
これを遺産分割協議といいます。
例えば、被相続人(亡くなった人)がご主人で、法定相続人が配偶者(妻)と子供2人(息子・娘)、相続財産が不動産(評価3,000万円)と現金3,000万円だとします。
法定相続分は配偶者が2分の1、子供が4分の1ずつですので、原則論では、不動産(評価3,000万円)は共有持分として、妻が2分の1、子供2人が4分の1ずつ相続して共有し、現金を妻1,500万、子供2人が750万ずつを相続します。
ここで、家族会議の上、遺産分割協議を行い、不動産(評価3,000万)を妻がと単独所有とし、現金1,500万ずつを子供2人が相続することもできるのです。遺産分割協議においては、法定相続分に依らず、相続することも可能です。 借地権の相続 承諾料って払うの?相続の際の注意点など解説
借地権と建物名義の一致
借地権を相続する場合、最も注意しなければいけないことが、借地権の相続人と借地上の建物の相続人を一致させることです。
借地権とは、建物を所有する目的で土地を借りる権利であるわけですので、原則として、借地権者=建物所有者です。
建物は妻が、借地権は子供が相続するなど、最も避けるべき相続の仕方です。
将来、借地権の売却等の際や建物の建替え等の際、借地権者と建物所有者で名義が分かれていることで、親族間で争いが起きたり、地主との契約関係において複雑な権利関係になってしまうと、予期せぬトラブルに発展してしまう恐れがあります。
地主への連絡を忘れずに
借地権の相続が発生した場合、地主に連絡することを忘れてはいけません。
地主と借地権者の関係は、土地賃貸人と土地賃借人ですので、相続が発生することにより。
契約当事者が誰になるのかということは、地主にとって気になるところです。相続が発生した際、また、相続によって相続人が決まった際には、地主への連絡・報告をきちんと行いましょう。
また、後々のトラブル防止のため、新たに地主と契約書を作成することが望ましいです。
借地権の相続準備も重要
借地権は相続される権利で、代々引き継がれていく権利です。
急に借地権者が亡くなり相続が発生した際、相続人は地主のこともわからず、地代の支払いが滞り、借地権が解除されてしまう、なんてことも少なくありません。
また、借地権者と相続人が疎遠な親戚関係であり、借地権を相続することなんて知らなかった…相続によって借地権を急に相続することになり、未払い地代を請求された…なんてこともよく聞きます。
借地権者は今ご自身が有している権利が残されていくもの、引き継がれていくものとして把握し、ご自身に万一のことがあってもすぐに対応できる状況に整えておく必要があります。
せっかく借地権という財産を有しているのにもかかわらず、借地権の相続について全く準備されていないと、急に借地権を相続することになった相続人が大変な思いをすることになることも考えられます。
借地権については、専門会社に相談を
借地権という不動産を取り扱う場合、借地借家法による定めや、法的定めに寄らない取り決め事項など幅広い知識と経験が必要です。
借地権の売却を検討するにあたり、地主との協議・交渉の際、借地借家法に定められている事項においても、法律に定められているから…という杓子定規な考えや進め方では、スムーズな借地権売買ができません。
法的定めや慣習上の取り決め、地主との関係性や地主の意見・意向をもとに、最も適している進め方をしなければいけません。
地主といい関係を築いていたのに、借地権を売却しようと不動産会社に相談したら、地主と険悪になってしまった…という話もよく聞きます。
また、借地権者が不動産会社よりアパート経営等を持ち掛けられ、地主に承諾なく進めてしまった…等、借地権の基礎中の基礎を把握していない不動産会社も残念ながら存在します。借地権については、借地権に詳しい・借地権に強い不動産にご相談されることをお勧めします。
借地権の専門会社に出会えます
『お困り不動産どうする?』には、借地権に詳しい専門会社が集まっています。
借地権に詳しい不動産会社を探すのも一苦労です。なぜなら、借地権という特殊な権利関係を取り扱う不動産会社が少ないからです。
また、不動産会社として多く広告を出している不動産会社はやはり大手不動産会社が多く、大手不動産会社には借地権以外の情報も多数集まっており、わざわざ借地権を専門的に取り扱う必要もないからです。
その中で、当サイトでは、借地権に精通した専門不動産会社を集めてご紹介をしております。借地権の取り扱いに長けている不動産会社との出会いをマッチングします。是非、ご活用ください。
監修者:ドウスル株式会社 代表取締役 村田 大介