借地権の相場はどのくらい?
借地権付き建物の媒介を依頼する際の相場の目安について紹介します。そして、なぜ?借地権付き建物の取引価格が変動してしまうのか簡単に紹介します。
借地権の相場を手っ取り早く知りたいという方もいらっしゃるかと思いますが、現実的には相場額を算出するのは、それほど簡単なことではありません。神奈川県宅建協会が公表している見解を一つのヒントにするならば「理想の不動産価格の半額プラスアルファ」が目安になります。
取引価格の相場が立てづらい根拠や、本来の価格の算出方法について紹介します。
借地権付き不動産の価格に明確な基準はない!
借地権付き不動産を取引する際に、明確な基準は決まっていません。査定を依頼しないと取引額の目安を把握することが難しいのは不動産全般にいえることですが、借地権の場合には特に査定額が変動しやすいことも要注意です。
従って「借地権付き不動産の相場は、通常の不動産の〇割だから、この不動産の価値は・・・くらいかな」と短絡的に計算してもほとんど意味はありません。借地権の相場を知るためには、明確な基準がないことを理解したうえで、できるだけ誤差を小さくするための知識を得ることが重要なポイントになります。
借地権付き不動産の価値が評価しづらい要因としては以下の点が挙げられます。
- ■借地権は譲渡、増改築・建て替えの際に必ず地主さんの承諾が必要になり、その際に費用もかかること
- ■借地権を購入した人は、購入後に地主さんと地代の支払いについて交渉しなければならないこと
こうした状況の一つひとつは、地主さん一人一人によって諸条件が違うからです。地主さんによっては譲渡承諾料は更地価格の10%と言っている人もいれば、借地権付き建物を取引価格に対する10%という地主さんもいらっしゃいます。それぞれの承諾条件の内容や物件の状況に応じた価格がその都度、見積もられるケースが一般的です。
借地権付き不動産の本来の価格の計算方法
借地権付き不動産の本来の価格は、以下の計算式にて求められます(あくまで理論上の「本来の価格」なので、この金額で売れるというわけではありません)。
公示価格×借地権割合
※公示価格は路線価の8割程度が目安とされているので、路線価から概算を割り出すことができます。
一般の方にとっては馴染みの薄い用語が出てきているので、かみ砕いて解説します。
- ■路線価
- ■公示価格
- ■借地権割合
路線価は、1㎡あたりの宅地の評価額のことであり、毎年国税庁が売買の実績や不動産鑑定士による評価などを元に発表しています。遺産相続の際の土地価格の算出のために用いられます。国税庁のホームページで最新の路線価をチェックすることができます。
地価に基づいて不動産鑑定士が算出する土地の価格のこと。土地の評価額の一つです。公共事業のための用地買取価格や民間の土地の売買価格の基準となっています。
土地の評価額に対する借地権価格の割合のこと。国税庁:財産評価基準書路線価図・評価倍率表にて現在の借地権割合を確認することができます。30%~90%まで幅広く定められていますが、傾向としては都心部ほど借地権割合が高くなる傾向があります。
【東京都と千葉県の借地権割合の比較】
A・・・90%
B・・・80%
C・・・70%
D・・・60%
E・・・50%
F・・・40%
G・・・30%
(東京都千代田区飯田橋の財産評価基準書路線価図・評価倍率表)
(千葉県袖ケ浦市神納の財産評価基準書路線価図・評価倍率表)
東京のビジネス街飯田橋では、借地権割合が70~80%で設定されているのに対して、都心から少し離れた千葉県袖ケ浦市神納では50%に設定されている地域が大半です。このように都心ほど借地権割合は高く設定される傾向があります。
借地権の相場が下がってしまう要因となりうるポイント
借地権はなかなか思うように取引できないということですが、価格が下がってしまう要因とはどのような点があるのでしょうか?あらかじめ要因が分かっていれば「本来の価格」に近い価格での取引を目指すことができるので、ぜひ参考にしてください。
地主さんとの関係がこじれている
借地権において、最も重要なポイントとなるのは地主さんの承諾および良好な関係です。「借地権買取の際に必須な地主の承諾|不動産業者に任せてトラブル回避 」でも解説しましたが、地主さんとの関係がこじれてしまうと、購入者も地主さんに対して地代や用途変更の相談・交渉がしづらいことが予想されるので、どうしても避けられてしまいます。
また、更新期間が間近に控えている場合は、買い手(一般の方が買主の場合)の方から敬遠されやすいので要注意ですが、買取業者さんなどに依頼する場合には更新時期はほとんど関係ないと思っていただいて問題ないと思います。
諸費用や地代の負担が大きい
借地権の場合、譲渡や建替え、更新の際などに地主さんの承諾料や更新料がかかります。また、毎月の地代の支払い義務もあります。地代や更新料などの負担が大きくなればなるほど、買い手の方の条件も大きく異なってきます。
こうした諸費用や経費の負担が大きいケースでは、借地権の価格も下がりやすくなってしまいます。
土地や建物の条件があまりよくない
例えば、日当たりが不良だったり、最寄駅からのアクセスが悪かったり、住居として建物が使いにくい間取りだったりする場合に、所有権の不動産もそうですが借地権も価格が安くなってしまう可能性が高いです。物理的に対処が困難なケースもありますが、例えば日当たりの問題を解消するために改築をすべきか否かについては、地主さんの意向を聞いてから手続きを進めましょう。
地主さんからローン承諾許可が得られていない
買い手の方が借地権を購入する際にローン承諾を地主さんから得られない場合があります(厳密にいえば、抵当権設定の承諾が得られない場合)。住宅ローンが使用できないと購入者は現金一括で購入することになるため、個人の購入者にとってはとても厳しい条件になってしまいます。
こういった場合には、借地権付きの建物を仲介ではなく、不動産業者に買取を依頼することでリスクを回避できます。
依頼をした不動産業者が借地権の取り扱いに長けていない
借地権付き建物は、特殊な事情が多々あるので取り扱いに長けた不動産業者に依頼したいものです。
借地権付き建物の取り扱い実績が豊富な不動産業者では、借地権に対するノウハウをつかんでいるため、一般的な不動産業者よりも高い価格で取引してくれるケースが多いです。反対に、借地権の取り扱いに長けていない業者は、ノウハウを持っておらず査定額もかなり低く算出されてしまうこともあります。
不動産業者をチェックして、借地権の取り扱いに長けているかを見極めてから依頼するようにしましょう。
まとめ
借地権付き建物の価格はかなり幅が広く、物件ごとに大きく異なることも珍しくないため、査定前になかなか金額を把握しづらい部分があります。しかしながら、ご自身の借地権の本来の価値を知り、ある程度の条件を自ら見直すことは、あとで後悔しないためにも重要です。本来の借地権の価格は「公示価格×借地権割合」の計算式で算出できます。
今回の記事では、借地権の価格が相場よりも大きく下がってしまいやすい要因を5点紹介しました。当てはまるか否かをチェックして参考にしていただけたら幸いです。
監修者:ドウスル株式会社 代表取締役 村田 大介