不動産登記とは?
不動産登記とは、不動産の所有者を公に示すために登記簿に記録をすることです。
登記がされていない場合、例えば詐欺や契約上の食い違いなどのトラブルが生じた際に、自分自身の所有権を証明するものがないため、不利になってしまいます。
不動産登記がされていないと「この土地(建物)は自分の物だ」と正当に主張することができないため、時には、購入した不動産であっても、第三者に取られてしまう可能性さえあります。
住宅を購入した場合はもちろんですが、遺産相続により引き継いだ場合にも不動産登記の手続きをおこなう必要があります。
また、相続などにより不動産を共同持ち分とする際には、所有者全員の登記手続きをしなくてはなりません。
不動産登記は、不動産を新たに取得したときや所有者が変わったときに、相続する不動産の地域の法務局にて手続きをおこないます(司法書士に依頼する場合、法務局に行って書類を提出するなどの業務を司法書士がおこなうので、ご自身で法務局に行く必要はありません)。
→異なる地域にある複数の不動産を相続する際には、それぞれの法務局に行って登記移転手続きをおこなわなくてはなりません。
例えば、東京と大阪の不動産を1件ずつ相続する際は、東京と大阪で対象不動産がある市区町村の法務局でそれぞれ手続きをおこなう必要があります。
不動産登記にかかる費用
不動産登記には、費用がかかります。
あらかじめ、どのくらいの金額がかかるのかを把握しておかないと、相続時に想定外の費用がかかり焦ってしまいます。
登記費用は、不動産の評価額や手続き方法(自分でおこなうか、司法書士に依頼をするか)によって異なりますが、まずは基本を押さえておきましょう。
登録免許税の計算方法(不動産の評価額×0.4%)
相続の際に、登記手続きを自分でおこなうにせよ司法書士に依頼するにせよ、必ず費用が発生するのが登録免許税です。
登録免許税は以下の計算式で求めることができます。
不動産評価額×0.4%(=0.004)
例えば、3,000万円の評価額の不動産には、12万円の登録免許税がかかることになります。
※1,000円未満の不動産評価額・100円未満の登録免許税は切り捨てになります。
◆不動産評価額の確認方法
不動産評価額は、毎年4~5月頃に送られてくる納税通知書や固定資産評価証明書に記載されています。
司法書士の依頼費用(相場)
不動産移転登記の手続きは、法務局に申請手続きをおこなう必要があります。
申請手続きは、個人でもおこなうことができるため、所有者自身がおこなうことも可能です。
ただし、以下の事情から自分自身でおこなうよりも専門家である司法書士に依頼する人が多いです。
登録免許税の申請手続きを自分自身でおこなわない人が多い理由
・手続きの内容が法律の専門的な内容であること
・平日の法務局が開いている時間(8時15分~17時15分)に手続きに行かなければならないこと
・不備があった場合に、その都度法務局に書類の訂正に行かなければならないこと
・登記移転の手続きは不動産の所有権を証明するとても大切な法律行為なので、万が一ミスがあれば大きな問題になってしまう可能性が高いこと
このような問題は、専門家である司法書士に依頼をすれば解決されます。
ただし、司法書士に依頼する際には、それぞれの司法書士が定めている手続き代行費用がかかります。
手続き代行費用の相場は5~10万円 程度です。
司法書士事務所によって、司法書士がどこまでサポートしてくれるのかが異なる場合もあるため、依頼を検討する際にはサービス内容も含めて比較検討すると良いでしょう。
その他の諸費用
金額としてはそれほど大きいわけではありませんが、不動産の相続登記には必要書類を揃えるための諸費用もかかります。
具体的に費用が掛かる項目は、以下の通りです。
- ・被相続人(亡くなった人)の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- ・相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明
- ・相続人全員の住民票
戸籍謄本は1通1,000円以下、住民票は1通あたり300円の費用であることから、費用の割合としては大きくありません。
しかし、これらの発行手続きも基本的に市役所の窓口でおこなう必要があるため、実費よりも手間やわずらわしさの面が負担に感じられるのではないでしょうか?
相続の仕方によって登録免許税は変わる
登録免許税は、相続の仕方や財産の状態によって費用が変わることもあります。
起こりがちなケースを紹介します。
◆被相続人が登記をおこなっていなかったケース
実際の所有者は親であるにもかかわらず、登記上の所有者がすでにずっと前に亡くなっている祖父の名義になっていることがあります。
このようなケースでは①登記上の所有者→被相続人②被相続人→相続人、という風に二重に登録免許税を納めなくてはなりません。
※ただし、2021年3月31日までに限り、このようなケースで①にかかる土地部分の登録免許税について、免除の申請をすることができます。
◆自分自身で住む場合など一定の条件を満たした場合、減免処置もある
相続する不動産に相続人自身が住むこと、築年数が25年以内であることなどの一定の条件を満たした場合には、登録免許税の税率が0.4%から0.15%に減免されます。
細かな条件が指定されているので、減免を申請する際には国税局で問い合わせをすると良いでしょう。
◆相続人が複数存在する場合
一つの不動産を複数の相続人で相続する場合には、一般的に相続の割合に応じて登記費用を負担します。
全体の相続登記費用を計算したのちに、一人ひとりの負担金額を計算しましょう。
また、相続人が複数人の場合、司法書士への依頼費用が変わるケースもあるため、注意しましょう。
相続登記費用が「高い」と思ったときにできる対処法!
不動産相続の際の登記費用について「思ったよりも高い」と感じている方もいるのではないでしょうか?
もし可能であれば、相続登記費用を支払わずに済ませたい、との思いもあるでしょう。
しかし、相続登記をおこなわないことには、大きすぎるデメリットがあります。
・相続登記をしないと、不動産が売却できない
・財産を共同で所有することになったときに、他の所有者が料金を滞納してしまうと、不動産を差し押さえられてしまう可能性がある(登記していないと自分の財産であると主張できない)
・子どもや孫の代に、権利関係の複雑な財産を残してしまうことになる
また、国としても相続登記手続きの義務化に向けて動いており、2020年中に義務化のための制度改正が実現する予定です。
以上の状況から、相続登記費用の対策をしたい場合には、次の2つの方法を考える必要があります。
相続登記をしたうえで不動産を売却する
不動産を売却して現金化することで、登記費用を始めとした相続にかかった費用を取り戻すことができます。
「不動産の売却なんて、そんなに簡単にできるの?」
「現金がすぐに必要だから、時間がかかってしまったら間に合わない・・・」
また、不動産の売却はただでさえとても大変だというイメージを持っている方も多いと思いますが、複数の相続人で共有して相続するケースであったり、築年数が古くてなかなか売れそうにない物件であったりすることから、なおさら困っている方もいるのではないでしょうか?
このように「早く現金化したい」「確実に売りたい」「売りたいけど、不動産が訳ありだから買い手が見つかりそうにない」という方は、買取専門の不動産業者がおすすめです。
買取専門の不動産業者とは、一般的な不動産と異なり、不動産会社が不動産を直接買い取ってくれる業者のことです。
業者の中には、訳あり不動産を専門にしている業者もあるので、共有持ち分や事故物件などの訳あり物件であっても売却の可能性は十分にあります。
不動産会社に買いとってもらう場合のメリットとしては次の点もあります。
- ・仲介の場合と異なり、条件さえ一致すればすぐに現金化できる
- ・取引の相手が企業であるため「住宅ローンが下りなかった」などのトラブルに発展する可能性が低い
- ・相手方が不動産のプロなので、契約不適合責任の面積や未測量でも安心して売却できる
専門業者の場合、独自のノウハウもあるため一般的な不動産業者では買い取ってもらえない不動産を買い取ってもらえたり、査定額が高くなったりする可能性もあります。
不動産業者による買い取りについては「相続した不動産がいらないときのための売却方法を解説!」の記事で詳しく解説しています。
相続放棄をする方法も
どちらかといえば、マイナスの相続財産が多い場合についての対策になりますが、相続放棄をする方法もあります。
相続放棄をすればそもそも最初から相続人ではなかったとみなされることになるため、相続に関する諸費用は発生しません。
ただし、プラスの財産や思い出の品を含めて、一切の財産を相続できなくなってしまうため、慎重に判断した方が良いでしょう。
上述の通り、不動産業者に売却をする方法を選べば、最短で問い合わせから数日程度で売却して現金化することも可能なので、売却をしてもどうしても損をしてしまう場合などに、相続放棄を検討すると良いでしょう。
まとめ
不動産を相続する場合には、登記費用がかかります。
相続税は、相続財産が多い人しか課税対象になっていないため、9割以上の人が対象から外れますが、登記費用は漏れなく発生します。
登記費用の内訳は以下の通りです。
・登録免許税:不動産評価額×0.04%
・司法書士費用:5~10万円程度
・諸費用:数千円程度(戸籍や住民票などの取得費用)
これらの費用を工面する方法の一つが、できるだけ早く売却手続きをすることです。
専門の不動産業者に買取を依頼した場合、問い合わせから数日程度で現金化できる場合もあります。
不動産の相続で困っている方は、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?
監修者:ドウスル株式会社 代表取締役 村田 大介