リースバック契約時に審査はないの?
通常、金融機関でお金を借りるときやクレジットカードを作成する際には、審査を受ける必要があります。
住宅ローンやマイカーローンなどが身近な例ですが、借りたお金をきちんと返済できる能力があるか否かを客観的に判断する必要があるためです。
返済能力をチェックする際には、現在の収入、勤めている会社の規模、勤めている会社の経営状態、会社の勤続年数、過去の借金やローンの返済の履歴などを総合します。
ここで、問題となるのが過去にローンの滞納履歴があったり、現在住宅ローンの返済が滞ってしまっていたりする方です。
このような場合、信用情報機関にていわゆる「ブラックリスト」として登録されており、審査が必要な場合ほとんど落ちてしまいます。
また、滞納履歴などがなくても収入の少ない方や勤続年数が短い方など、返済能力が十分ではないとみなされた場合には審査に落ちてしまいます。
では、リースバック契約の場合は審査が必要なのでしょうか?
この章では、リースバックに審査が必要か否かについて解説します。
※リースバック契約とは
リースバック契約とは、ご自身の住宅を不動産会社に売却したのちに、賃貸契約をして同じ物件に住み続けることです。
売却の際にまとまったお金が入ることと、住宅を売っても退去しなくても良いことから、近年非常に人気の高い契約手続きです。
リースバックに対応している不動産業者にてリースバック契約手続きを行うことで、リースバックの契約を進めることができます。
リースバックの契約の流れと契約時に必要な準備物!失敗しないためのポイント
信用情報機関での審査は不要
リースバック契約の際には、信用情報機関での審査はされません。
ですので、例えば過去に住宅ローンや返済の滞納などがあり、お金を借りようと思っても審査に落ちてしまってなかなか借りられない、という方もリースバック契約を結べるケースは珍しくありません。
信用情報機関での滞納の履歴は最短でも5年間残ってしまうため、数年間は経済的に安定している方であっても、審査が通らないというケースはあります。
「リースバックは審査がない」
といわれるのは、以上のような理由からです。
無条件に契約できるわけではない
審査がないからといって、無条件にリースバック契約ができるわけでありません。
売却後には、賃貸物件として毎月家賃を支払わっていかなくてはならないため、きちんと支払い能力があるか否かという点はチェックされます。
また、家賃を何か月も滞納してしまった場合には、退去を命じられてしまう危険性もあります。
・将来的な収入(給与・年金) ・手元の金額 ・リースバックの売却額
など、賃貸物件としての家賃を十分に支払える能力がないとみなされた場合には、不動産会社からリース契約を断られてしまうこともあります。
具体的なリース契約の条件は、不動産会社ごとに異なります。
しかし、多くの不動産会社で共通する項目が多いため、次の章にて詳しく解説します。
契約時に審査がないからと言って、後先考えずにリースバック契約を進めることは危険であることを理解しておきましょう。
リースバックの契約時の注意点とは?
リースバック契約は、個人信用情報機関での審査がない代わりに、注意して意識しておきたい点があります。
ここで紹介する内容について、条件を満たしていなければそもそもリースバック契約が結べなかったり、リースバック契約を結べたとしても結果的にトラブルにつながってしまったりする可能性が高くなります。
この章では、多くの不動産会社に共通してみられるリースバックの条件についてチェックしましょう。
家賃の支払い能力があるか?
リースバック契約は、将来の賃貸契約を前提とした契約手続きであるため、家賃の支払いが滞りなくできるかどうかという点が非常に重要なポイントです。
そして、支払い能力の有無に関しては不動産会社でも、独自の判断基準で審査を行います。
ただし、必ずしも給与所得などの安定収入が必須とされるわけではありません。
リースバック契約は、高齢者の契約者も多く、年金やリースバック物件の売却額など、家賃を支払うための資金が十分にあれば問題ありません。
また、併せて注意点として紹介したいのは、支出についても十分に把握しておくことです。
特に大きな問題となるのは、リースバック物件のローンの残債です。
上で紹介した通り、オーバーローンになってしまう場合に限らず、売却額の大半をローン残債の支払いに充てざるを得ない場合も考えられます。
オーバーローンになっていないか?
リースバックの前提条件として、オーバーローンの状態になっていないことが挙げられます。
オーバーローンとは、住宅の売却額よりも住宅ローンの残りの金額の方が高い状態のことです。
例えば、リースバックで1,000万円の買取査定額の物件について、住宅ローンの残債が1,500万円ある場合、住宅ローンの残債の方が500万円多い状態です。
このままではリースバックはできないため、取れる選択肢は以下の3つです。
不足分の500万円を預貯金などで支払って、オーバーローン状態を解消した後に、リースバック契約を結ぶ
(リースバックの売却額を全てオーバーローンの返済に充て、さらに不足分の支払いもしなくてはならないため、手元にまとまった金額をあらかじめ用意しておく必要があります)
リースバックでの売却を諦めて、任意売却などの方法で不動産を売却する
※任意売却・・・借金のローンの返済が2か月以上滞ったときに、競売ではなく一般の不動産売買に近い形で物件を売却すること。任意売却をすると、比較的物件の相場価格に近い金額で売却できる反面、物件を手放さなくてはならなくなります。
売却自体を諦めて、別の方法を考える
ご自宅の売却自体を諦めて、別の方法を考えること。
例えば、自家用車を売却して手元の資金を絞り出したり、家計全般を見直したりするなどの方法で、ご自宅を売却しなくても済むように検討する方法です。
また、そもそも物件自体がすでに金融機関に担保として取られ、抵当権を設定されてしまった場合、物件を売却することができなくなってしまいます。
名義人全員の同意があるか?
リースバック契約を結ぶ際には、名義人全員の同意が必要です。
不動産の名義人は世帯主1人に設定されるケースが大半ですが、まれに夫婦の共有になっていたり、相続の際に複数の相続人に所有権が相続されていたりするケースでは、名義人が一人ではありません。
特に相続が絡んだときには非常に厄介です。例えば、相続人が死亡した場合、権利者はその相続人に移ります。相続人同士面識がなかったり、なじみのない遠方の土地に住んでいたりすることもあります。
また、もし名義人に設定されていなかったりした場合でも、家族間でリースバックの方向性については詳しく話し合っておくことが必要です。
例えば、子や兄弟は現段階では名義人ではなくても、将来的には相続人の立場になることも考えられます。
「数年後に住もうと思っていた家なのに、勝手に売却の手続きを進めるなんて・・・」
といったように、お子様などから強い不満が生じたり、家族間でトラブルが生じてしまうのを防ぐためには、事前の話し合いが重要です。
「事故物件」ではないか?
ご自身ではあまり気にしていない場合であっても、一般的に「事故物件」といわれる物件の場合、リースバックでの買取をしてもらえる可能性は低いでしょう。
もし、買い取ってもらえたとしても、相場価格よりもずっと安い金額での買取になってしまうと予想されます。
ただし、だからといって事故物件であることを不動産会社に内緒にして売却するのは違法行為です。
もし、意図的に事故物件であることを内緒にして不動産を売却し、後から事実が発覚した場合には、契約の解除を求められたり、損害賠償を求められてしまったりする可能性があります。
※事故物件
過去に物件の敷地内で自殺や他殺事件などの「事故」が起こってしまった物件のことです。
特に事件性の高いケースやニュース番組などで報道された事件などは、不動産の価格に大きな影響を与える可能性が高いです。
リースバック契約する前にチェックしておきたい4つのポイントとは?
リースバック契約をする際には、上述の不動産業者との取引上の注意点の他に、所有者自身が強く意識しておきたいポイントが3つあります。
4つのポイントをしっかりとチェックすることで、契約後に説明の食い違いなどによる失敗をするリスクがなくなります。
この章では、リースバック契約をする際に十分に注意しておきたい点を3点紹介します。
リースバック後の買戻しの条件をチェック!
リースバック契約の大きな特徴の一つは、賃貸契約の後に買い戻しができるという点です。
ただし、買戻しの条件は不動産会社のプランによって異なるため、注意が必要です。
あらかじめ取り決めしておいた金額を支払えば、いつでも買戻しが可能な不動産会社
リースバック契約後の決められた期間に自動的に買戻しになる不動産会社
(このような不動産会社と契約している場合には、買取金額が用意できない場合は、物件を退去せざるを得ないということになります)
そもそも買戻しにはあまり協力的ではない不動産会社
もし、リースバック契約後の買戻しの見込みがあれば、できるだけ好条件の不動産業者との契約をした方がよいことは言うまでもありません。
リースバック後の購入金額が安い
買戻しの時期について比較的融通が利く
もし、まとまったお金が準備できなくても、賃貸物件として長く住み続けられる
以上の条件をできるだけ満たす不動産会社を選択できれば、いったんリースバックとして物件を手放すことになっても安心です。
賃貸契約の更新の取り決めについて注意
リースバック契約後の賃貸契約は、一般的には2年程度の期間を設定した賃貸契約となります。
この時、更新期間についての考え方は不動産会社によってまちまちです。
更新の可否
更新期間が来たときに、更新ができるかできないかは、不動産会社の意向によっても左右されます。
元々の所有者との継続した契約を重視している不動産業者では、よほど家賃の滞納や問題行動がなければ優先的に更新をしてもらうことができます。
しかし反対に、転売目的の投資家などは契約の更新にあまり協力的ではないこともあります。
更新料
不動産会社によっては、賃貸契約満了時に一定額の更新料が求められます。
住み慣れた家や住み慣れた街に長く住み、暮らしたいという希望を持つ方にとっては、まず契約更新の際にできる限り意向をくんでくれる不動産業者がおすすめです。
契約書・重要事項説明書にはしっかりと目を通す
契約書や重要事項説明書は、非常に重要なことがぎっしりと書かれています。
文字が小さく、法律的な専門用語などが多く記載されているため「そもそも読む気にならない」という方も多いのではないかと思います。
しかし、非常に重要な注意点として、不誠実な不動産業者の中には、口頭と書面とで説明の内容が一致していないケースもあります。
食い違いが生じた場面では、書面として紙に記録が残っていた方が有利です(口頭での説明の場合は、内容の証明が難しいため)。
そのために、契約書や重要事項説明書の内容が、ご自身が希望する内容の通りのものであるかが重要であるというわけです。
リースバック契約後の収支について慎重にチェック
手元にまとまったお金が必要な場合や、現金化の緊急性が高いときなどには、誰しもつい前のめりになってしまうものです。
しかし、実際に起こりがちなトラブル例として、次のケースがあります。
「実際にリースバックをしてみたら、思ったよりも家賃の負担が大きい。他の場所に引っ越した方がよいかもしれない」
「まとまった収入が入る見込みでリースバックを契約したけど、予定が変更になり収入の見込みがなくなってしまった」
以上のような見込み違いがあると、毎月の賃料の支払いが困難になってしまう可能性があります。
そして、毎月の賃料が払えない場合には、退去をしなくてはならなくなります。
住宅を売っても自宅に住み続けるという希望を叶えるためにリースバックを選択したにも関わらず、最終的に物件を手放さざるを得なくなるのでは本末転倒です。
むしろ、通常の不動産として売却するよりも相場が安くなってしまう傾向があり、デメリットの方が大きくなってしまいます。
まとめ
リースバックには、通常の住宅ローンを借りたりクレジットカードを契約したりする際に行われるような情報信用機関での審査は行われません。
しかし、審査が行われないからといって何も気にせずに契約をしてよいわけではありません。
特に、契約後の支払い能力については、契約を結ぶ不動産業者も独自の審査を行うため、ご自身でも慎重にチェックを行うことが大切です。
・収入/支出の見込み
・まとまった収入・まとまった支出の予定の確認
・イレギュラーな出費を想定すること
また、リースバック後の購入を検討している場合には、売却後のライフプランの想定や再購入の際の条件までしっかりとチェックすることが大切です。
以上の注意点を踏まえれば、失敗のないリースバックの契約をすることができます。
監修者:ドウスル株式会社 代表取締役 村田 大介